無言の出席者はいらない
4. 発言こそが会議での最大の貢献
日本の会議は、時間が長いだけでなく、出席者数も多い。筆者もシリコンバレーに本社を置く大手SNS企業の幹部から、日本に出張すると会議で山ほど名刺が必要だと冗談半分に言われたことがある。しかも、出席者のうちの全員が発言するわけではないという点も、よく指摘されている。外国人エグゼクティブたちはこの点を「非効率だ」とよく怒っていたという。「発言せずにその場にいるだけでは、時間とリソースの無駄である。会議で黙って座っているより、デスクで仕事をしていた方がよい」というわけだ。
『「コミュニケーション」の基本』には、アメリカでは発言こそが会議での最大の貢献だとみなされているということが記されている。つまり、発言しない人は、その会議において価値がないに等しいのだ。それは、伊藤氏によると、個人のアイデアに価値が置かれているからだという。
アメリカの企業では、上下関係によって発言を躊躇したり、すばらしいアイデアではないから発言がためらわれるということはない。個人が委縮するようなことのない、発言しやすい雰囲気があり、そういう環境づくりが意識されている側面もある。
日本企業では人間関係が重要
では、どうすれば出席者全員が発言できるような環境をつくることができるのか。伊藤氏は、日本では「人間関係を良くすることが第一」と指摘する。
「上司と部下の上下関係や年齢、性別にとらわれないような自由な発想を歓迎するような雰囲気づくりや、コミュニケーションがとれるようになった方が、モチベーションや生産性が上がるのでは」(伊藤氏)
これは、会議の場面だけにとどまらず、日本企業の職場環境そのものに当てはまることだろう。働き方改革においては、人間関係を良くする、そのためのコミュニケーションというものが、結局、あらゆる方面に影響を与えるともいえるほど重要だ。伊藤氏の勤めた外資系企業の上司たちも、人間関係を良くするためのコミュニケーションに懸命に取り組んでいたという。伊藤氏に聞かせてもらったさまざまな逸話は、また別の機会にゆずりたい。
後編では、会議の本題として展開されるプレゼンを、効率よく、しかも効果的に行うために重要な点を述べる。