このテレビ会議システムは、導入して終わりということではない。國居氏は、今後の展開を語った。

「岐阜遠隔教育協議会という組織を、同じ岐阜県の白川町と郡上市が合同で立ち上げ、岐阜大学や県教育委員会の情報担当の先生にアドバイザーとして加わっていただきました。遠隔教育の効果的な活用について、よりよいやり方をお互いに交流し合いながら模索し、また公民館や図書館などの公共の施設ともつないで、学校教育や社会教育に生かしていきたいと考えています」

 今後はプログラミング教育についても、市内のテレワークオフィス「HUB GUJO」から講師を招き、教育委員会のシステムから各校に配信することも予定している。市内に7人いるALT(外国語指導助手)についても同様に、一斉に英語教育を展開できるようにするという。

 また、郡上市は年に1回、東京都港区と、学生の交換ホームステイ交流を行っている。その事前準備や事後の報告にこのシステムを利用することで、より交流の密度を濃くできると考えられるという。テレビ会議での対話は、画面上の交流だけでなく、リアルのコミュニケーションにも変化をもたらすのだろう。

 さらに、その恩恵を受けるのは子どもたちだけではない。

 郡上市は「郡上学」という名前で、その魅力に触れたり未来を考える社会教育講座を設けている。今後は、この講座を白川町や他の自治体でも受講できるようにしたり、逆に他の地域で展開されている講座を、郡上市内で受講できるようにもしたいという。子どもたちだけでなく、大人にとっても、学びや人材育成のアプローチが変わっていく。

 遠隔教育や働き方改革だけでなく、地域を越えた交流や人材育成を可能にし、人々のコミュニケーションのあり方を大きく変える、郡上市のテレビ会議システム。國居氏は、最後に大きな展望を語って締めくくった。

「以前、NASAと郡上市の中学校をつないで、音声だけですが、宇宙飛行士とのやり取りをしたことがあります。将来的にはテレビ会議で、国際宇宙ステーションにいる宇宙飛行士と対話できるかもしれない。夢は広がりますね」