獣の奏者1 闘蛇編』(上橋菜穂子著、講談社文庫)

 装丁家の鈴木成一さんが表紙に恐竜みたいのを描いた本を作ったのと時期が似ていたんですよ。同じものをできないなと思って、ちょっと工夫したらうまくいきました。そうすると打ち合わせのときに編集者の反応がいいんですよ。「ああ、いいですねえ」みたいに。

折原 打ち合わせのときにこういう感じでどうでしょうと絵を描いたりして。

坂川 簡単な絵でいい。詳しく描きすぎるとロクなことがないから、含みを持たせたラフ案にするんです。以前はそればっかりだったんだけど、今はリアルにやらなきゃいけないでしょ。それがちょっとかわいそうですね、今のデザイナーは。

折原 ほとんど完成形みたいなのをいくつか出すみたいなパターン。

坂川 そうそう。それぐらいのを出すとみんな何かひと言言いたくなるんだよ。わけがわからない状態にして最後まで持っていって、「ほら」って見せる方が、「おおーっ」となるわけですよ。

折原 最後に付け足したいことがあれば。

坂川 「たくさん売れたからいい本というわけじゃない」「いい本はそんなに売れない」と言う人がいるじゃないですか。こっちにしてみればどうでもいいんです。請け負ってその本をたくさん売れるようにして送り出したらそれでいいと思っている。それが一番。

折原 作品に対する愛着はあるけど執着はない、みたいな。

坂川 いいこと言った。その通りだと思う。