しかし、現実には決してその通りにはならない。アメリカ国防総省運用試験評価局(DOTE)のロバート・ベラー新局長が公表した報告書によると、F-35の初度実用試験評価が完了予定時期に近づいているにもかかわらず、要求基準をするための改良作業が山積しており、心許ない状況が続いている模様である。

 とりわけ、F-35の“強さ”を支える源の根幹をなすミッションデータファイルの開発が難航している。このソフトウエアが完成に近づくと仮想敵の状況も変化しており、さらにアップデートが必要となるというまさに“イタチごっこ”のような悪循環に陥っており、はたして予定どおりに中国やロシアの新鋭戦闘機をものともしない“世界最強”のF-35が誕生するのかどうか、アメリカ国防総省自身が疑問符を投げかけている状態だ。

 このような技術的問題以上に、「ともかくアメリカから最新鋭の兵器を輸入すれば安心」としている人々は、一国の国防力とは「適正な国防戦略」「訓練が行き届き、士気旺盛な国防組織」「最先端技術を手にした国防産業」が三位一体となっていなければならないことを失念しているようだ。

 とりあえず、ある程度の数のF-35を手に入れることは致し方ないとしても、アメリカの国益に大きく貢献する一方で、せっかくF-1からF-2(若干失速したが)と積み重ねてきた国産戦闘機製造技術を萎(しぼ)ませてしまっては本末転倒といわざるを得ない。アメリカだけを同盟国として頼り切っている日本側としては、アメリカの尖兵を自他共に自認しているアメリカ海兵隊の座右の銘に「永遠の敵も永遠の友もいない」という言葉があることを決して忘れてはならない。