有安杏果は0歳の赤ん坊で芸能界にデビューし、その後、子役としても活躍し、22年間芸能生活を続けてきた。小さいころから表現することが好きだったという。ももクロのメンバーになってからは、もともと好きだったダンスと歌の才能が開花した。さらに、最近ではギターやドラムのスキルも磨き、その多才さに期待が集まっていた。しかし、開放性の高い人にとっては、周囲の評価はどうでも良い。また、自分の才能に満足することはあまりない。常により高い水準に、あるいは何か新しいことに興味を抱くので、なかなか自己満足ができないのだ。
有安杏果は日本大学藝術学部で学ぶ中で、開放性が高い学生たちに出会い、自由に創造することへの憧れを次第に強く抱くようになったのではないだろうか。ももクロの活動を続けながら4年間で日本大学藝術学部を卒業したほどの努力家なので、自分をきちんとコントロールできる人なのだが、創造活動に必要なのは自制心よりもむしろ自由である。彼女の気持ちの中で、自由な時間がほしいという思いが次第に強くなり、その思いを抑えることに「疲れ」て、ついにももクロを卒業するという決断に至ったのだろう。
一度普通の(自由な)暮らしをしてみて、自分にどんな表現の道があるのかをじっくり考えたい、というのが彼女の本心だろう。この気持ちは、クリエーター特有の心の乾きだ。彼女が思い描く「普通の生活」は、決して平凡な暮らしではないはずだ。私の推論が正しければ、彼女はいずれ自分なりの表現手段を見つけて、クリエーターとして頭角をあらわし、ももクロファンの前に戻ってくるだろう。
ももクロの物語は、4人のステージによる新章に突入する。4人の個性がこれからどんな物語を生み出すのか、楽しみである。有安杏果は、ももクロを卒業したとはいえ、この物語にこれからもきっと関わってくるだろう。彼女たちの成長物語を、これからも楽しみに見守りたい。
(文中敬称略)