『みんな、いつか個性に代わる欠点を持っている』

 これは、ももいろクローバーZ(通称ももクロ)の振付師として知られる石川ゆみさんが7月に出版した本のタイトルだ。このタイトルだけでもすばらしいメッセージだが、本書にはこの結論を支える豊かなエピソードが物語られており、読後にとても前向きになれる本だ。

 人は誰しも何らかの欠点を持っている。その欠点とどのように向き合えば良いのか。そして欠点を個性に変えるにはどうすれば良いのか。石川さんは、振付師としてアイドルグループを育てながら自らも成長してきた経験をもとに、この問いにとても優しく答えている。人を育てる立場にある人にはぜひ一読を勧めたい。

 マイナスをプラスに変える

 今や、AKB48、Perfumeと並ぶビッグネームに成長したももクロ。その活動は、ももクロの存在なしではおよそ接点がなかったと思われる、さまざまなジャンルを巻きこんで成長を続けている。

 ここ半年あまりの活動を振り返ってみても、ロック、フォーク、社交ダンス、女子プロレスなどとのコラボレーションを実現し、本格的な映画や舞台に主演するなど、その振り幅の大きさには驚かされる。その目覚ましい成長を、路上ライブをしていた駆け出しの時代以来、ダンスの振付という核心部分で支えてきたのが石川ゆみさんだ。

みんな、いつか個性に変わる欠点を持っている』(石川ゆみ著、宝島社、1400円、税別)

 本書を読むと、ももクロの成長を支えながら、石川ゆみさん自身も自分の欠点と向き合い、自分の個性を伸ばし、今の地位を築いてきたことが分かる。石川さんは、歌って踊れるダンサーを目指し、歌にも踊りにも高い評価を得ていたが、センターに選ばれることはなかった。石川さんには、ダンスチームでセンターを務めるだけの、傑出したスター性がなかったのだ。

 その石川さんに、あるとき振付の仕事の依頼が来た。最初はむしろ苦手な分野だったという振付の仕事を続けていくうちに、次第に自分の適性に気付き、振付を通じてアイドルやアーティストを育てるという分野で、その才能を開花させた。