このようなすばらしい仲間とファン、そして個性と技術を育ててくれた運営チームを捨てて、有安杏果はももクロを卒業した。リーダーの百田夏菜子は、卒業コンサートで「かなわぬ夢があることを知った」と寂しそうに語った。これもまた、1つのドラマだ。成長物語を実演し、次々に夢を実現してきたももクロの5人が人生の分かれ道に直面した。事実は小説よりもドラマチックだ。

 これから先、彼女たちの物語はどのように展開していくのだろう。それを予想するのは難しいが、有安杏果がももクロを卒業した理由を探れば、彼女たちの未来が少しは見えてくるかもしれない。

有安杏果がももクロを卒業した理由

 有安杏果は卒業するにあたり、「音楽活動と一度距離を置いて、普通の生活を送ってみたい。表現するのが嫌になったわけではない。表現にはいろいろなやり方がある。これから何をするかは決めていないが、普通の生活を送りながら教養や知識を身につけたい」という趣旨の発言をしている。

 彼女はももクロの5人のメンバーの中ではただひとり大学に進学し、日本大学藝術学部写真学科を卒業した。卒業制作博覧会では奨励賞を受賞している。彼女はまた、最近では自ら作詞・作曲をしている。このような経験を通じて、自ら何かを創り出すことへの欲求が高まったのだろう。この欲求は、創作意欲にとりつかれたことがない人には、なかなか理解しがたいものだ。

 人間には、開放性と呼ばれる性質がある。好奇心や創造性の背景にある性質であり、外の世界への関心の強さや、自由な創造への意欲の強さに関係している。ビッグファイブと呼ばれる性格因子の1つであり、代表的な判定項目には「絵画などの制作、著述、または作曲をする」「哲学的、精神的な問題を考える」が挙げられる。有安杏果は、自ら作詞・作曲をし、写真による表現に取り組んでいるので、間違いなく開放性が高い性格である。開放性が高い人は、何よりも自由を好む。一方で、スケジュールやルールに束縛されるのが苦手である。