意外と知られていないが、J.F.ケネディ大統領の父親は、アルコールの密輸ビジネスで財産を築いた人だ。法律で禁止すれば、法律の裏をかく人間は絶対に現れる。ここに挙げたのは、ほんの一例に過ぎない。
「禁酒法」は、施行から13年後に発効した「合州国修正第21条」によって廃止された。「禁酒法」は大規模に実行された「社会実験」といってもよいが、動機がすばらしくても「意図せざる結果」がもたらされて失敗した典型的な事例というべきであろう。
ちなみに「禁酒法」関連の条項は、合州国憲法の修正条項が全面的に廃止された最初のものである。現在のところ、これ以外に廃止された修正条項はない。
州レベルでは生きている禁酒法
米国では連邦レベルで「禁酒法」は廃止されたが、州レベルでは現在でも「禁酒法」は生きている。
たとえば、私も住んでいたことのあるニューヨーク州では、日曜日の午前中はアルコール類の販売は現在でも禁止されている。これは食料品店でもレストランでも同様だ。なぜなら、日曜日はキリスト教にとっての安息日であり、午前中は教会に行くべき時間帯だからだ。
事前に購入したアルコール飲料を飲むことまで禁止されているわけではないが、「禁酒」に関する社会的なコンセンサスが出来上がっているのである。「バイブル・ベルト」と呼ばれる南部諸州ではもちろん日曜日のアルコール販売は終日禁止だが、厳しいのは南部だけではないのだ。