まず、最初の段階から見ていこう。エサづくりを担うのは、カミチクファームの中に設置されている「TMRセンター」だ。「TMR」とは酪農用語で "Total mixed rations" (混合飼料)のことを指す。同センターでは、TMR発酵飼料というオリジナル飼料を平均1日あたり80~100トン製造する。

 興味深いのは、地域資源をしっかりと活用している点だ。現地に行ってみると、焼酎かすの甘い香りに包まれた。九州一円の農家から飼料用米などを調達するだけでなく、食品企業などから焼酎かすなどの食品副産物を調達し、飼料に変えている。

TMRセンター。左右にある白いものができあがった飼料だ

 この餌を食べる牛たちは同じくカミチクファームで育てている。哺育・育成・肥育をしている順番を見学させてもらった。仔牛はまだ小さく、かわいらしいが、大人になった後の肥育の段階では圧倒的なボリューム感に驚かされる。肥育とは、食用にするため牛を大きくし、肉をつけさせる工程だ。

生まれて2~3カ月の仔牛たち
肥育を経て牛は約20カ月間育てる

 肉質のよい牛を生産するには、血統の良さも重要なポイント。カミチクファームにある「家畜人工授精所」では、自社牧場の種牛を使って人工授精も行っている。人工授精や体内受精・体外受精を行い、生まれた仔牛は母牛と過ごし、ミルクから免疫をもらい育つ。

南さつま家畜人工授精所。牛の血統が上に書かれている
伊佐牧場で放牧される牛たち
伊佐牧場では酪農を行うほか、チーズ工房もある。工房では、カチョカヴァッロがつくられていた

 育てられた牛のうち肉牛は、鹿児島食肉センター内にある、と畜から最終加工まで一貫処理するカミチクのラインに乗り、市場で出回ることになる。強みは肉が衛生区域外に一度も出ないため、新鮮な状態のまま加工処理ができるということ。スライスパックの状態で海外への輸出も可能になっている。

鹿児島食肉センターでと畜された牛たち
牛肉の等級は切り込みからのぞき、サシの入り具合などで判断する。これはA5。目利きは熟練が必要になる
肉は運ばれてきて解体作業が行われる。一番奥で解体をしたあと、さらに肉を分解し、手前の真空パックなどの処理も行っていく
スライスパックなどの処理も別室で行われており、お店にあわせて対応できる体制がある