2017年8月にアメリカ穀物協会から「持続可能性に貢献するアメリカの最新農業技術」を視察しないかとの招待をいただき、視察旅行に参加してきた。4回にわたり、そのレポートを掲載している。
(前回はこちら)「誤解の中で農業の啓蒙活動に取り組むモンサント」
今回のアメリカ視察で、ある種の目玉になっていたのがクライメートコーポレーション社の農業用気象分析システム「フィールドビュー(FIELDVIEW)」である。
クライメートコーポレーションは2006年に2人の元グーグル従業員が立ち上げた。当初の社名はウェザービル(WeatherBill)で、自社の気候予測システムを使って天気保険(天候によって被る損害を補償する保険)を売っていた。だが、2010年に農業分野に事業をシフトし、2011年に社名を現在のものに変更した。これに注目したモンサント社が、2013年に同社を約11億ドルで買収している。
モンサントによる買収直後、フィールドビューの原型となる「クライメート・ベーシック(Crimate Basic)」「クライメート・プロ(Climate Pro)」を発売、2015年にフィールドビューが発売された。
フィールドビューは、その名の通り、農地や作物の状況を常に監視するシステムである。各農地ごとに日々刻々と変わる天気や降雨量、作物の生育状況などをビジュアルに知ることができる。データはクラウド上に置かれて、農家はいつでもパソコンやタブレットなどから見ることができる。いわゆる「精密農業」を実現するためのツールの1つだと言えるだろう。
フィールドビューの使用料は、機能限定タイプなら無料、標準タイプで年間749ドルである。農場面積が2500エーカー(約1000ha)以上になると使用料金は高くなり、通信料や表示に使うiPadなども別売りだが、1000haを監視するのに年間8万円程度で済むのだから、とても安価だと言えるだろう。