「働き方改革」を論じる有識者(学者、諸官庁政策担当、著名な経営者など)は、そのほとんどが「働き方改革実現のキーワードは、管理職層の動き方である」と言及・提言する。つまり、「働き方改革の成功の鍵」はズバリ、職場の働き方を決める「マネジメントを変えること」と断言して良い。

管理職はなぜ働き方を改革できないのか

 しかしながら実際には、とりわけ社内・職場の管理職層(部長、課長クラス)が、こういった活動に対して積極的に行動できていないのが現実であり実態ではなかろうか?

 その理由・背景は大きく分けて3つあると考えている。

【1】「管理職の役割定義」に問題がある

 管理職が、自部門の業績向上・成果物レベルアップのために、時間投入して“頑張る”しかないと思い込んでいる。特に日本企業では、管理職が自ら実践するプレイングマネージャースタイルが当たり前化している。“やり方の手本を見せる”ことがマネジメントであり、管理職の職務だということが暗黙の了解になっている。

 大・中小、規模にかかわらず、多くの日本企業では「職場を管理・コントロールする」ことが管理職の重要な役割であるとあまり認識されていないか、あるいは無自覚である印象が強い。

【2】そもそもマネジメント・管理方法の「教育」を受けていない

 オフィスワークに従事するおおよその中間管理職層には、上記のような考え方・視点を学ぶ機会・場がない。製造現場では当たり前の、自部門の見える化や問題解決(改善活動)を実施した経験がない。方法論が分からないため、管理・改善活動に着手できていない職場が多い。

【3】過去の業務改革・組織統合の弊害(管理職負荷オーバー)

 2000年代前半から、業務改革活動による効率化活動では、似たような活動目的の組織を統合し、かつ管理職の権限委譲、管理スパンを拡大することで、意思決定スピードを速める施策を打ってきた。しかし、結果的にマネジメントする対象者数が増えたことや、内部統制やコンプライアンスといった新たな管理業務も追加されたことで、管理職の負担・業務負荷が拡大し、狙いどおりの効果が出ていない職場が多い。

 最近の若い層が「管理職になりたくない」と答える傾向が強くなっている理由もこれにあたると考える。