現地の報道によると、長浜容疑者は、今回、被害者2人の現地でのアテンドをしていて、パラワン州の州都、プエルト・プリンセサ市に、夫が日本人というフィリピン人女性を責任者に据えたコンサルティング会社を経営しているという。

 しかし、実態は、エビなどの養殖海産物の売買業や、日本へパラワン州からダンサーなどのフィリピン人女性を斡旋するビジネスを手がけていたという。

 捜査当局は、保険金目当ての殺人事件として捜査をさらに進めている。

 4月に発生したパチンコ業の日本人社長殺害も、「ビジネス絡みか、暴力団関係か、何かのトラブルで日本人に殺されたのだろう」(フィリピン在住の商社ビジネスマン)という見方が有力だ。

日本人同士のいさかいが殺人に発展

 これまでにも、日本人がフィリピン人のヒットマンを雇い、1億円の保険金を狙った事件があり、2016年5月、日本人を殺害した容疑で日本人3人が逮捕されている。ほかにもこの種の事件は多い。

 日本人同士のトラブルは、ビジネスでの軋轢や利害関係、さらには個人的憎悪に関する場合が多いという。

 さらに、前出のフィリピン在住の日本人企業経営者は、「在留邦人の多くは、日本よりはるかに小さいガチガチの日本人コミュニティの中で生きていかないといけない。日本人村社会でのさまざまな競争や見栄の張り合い、さらには掟に従えなかったりで、メンツを潰され、最終的にやっていけなくなる人も出てくる」と話す。

 つまり、「殺害しているのはフィリピン人だが、依頼しているのは日本人」で、「日本人を殺しているのは日本人」(同上)という場合が増えているという。

 また今回、フィリピンの最後の秘境と日本でも持ち上げられていたパラワン島周辺は、かつて、太平洋戦争中に旧日本海軍の艦船の停泊地として利用され、大戦末期、米軍の攻撃で沈んだ沈没船が何隻もある戦禍の傷跡が残る土地だ。

 親日国と言われるが、個人レベルでは戦時中の植民地支配に対し、感情的になるフィリピン人がいないわけではない。

 さらに、殺傷事件による文化的認識の違いも大きい。

 フィリピンでは、日本や米国の先進国で起こる「通り魔や無差別殺人」といった謂れのない人たちが殺されることの方が罪深いと思われている。

 金銭的、人間関係の揉めごと、怨恨など、犯行理由が明らかになっている場合が多いフィリピンでは、一般家庭での銃装備も、あくまでも「自己防衛」の手段。

 大型モールなどで簡単に手に入るし、ホテルや銀行といった公共の場では、米国と同様、「銃は日常」なわけだ。

 経済成長で格差社会が一層拡大し、麻薬常習犯や犯罪が増加する中、「お金のためなら、何でもする」(フィリピン在住の商社ビジネスマン)という一種の社会的風潮が、「フィリピンの銃社会のリスクを高めても、一掃することはない」、と肝に銘じておかないといけないということだろう。