壮大な自然に恵まれた南半球の島国、ニュージーランド。最近では、世界的なメガヒットとなった映画『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』の撮影地としても有名となった。
羊の数が人の数をはるかに超え、世界屈指の「羊の国」(人口約460万人、羊の数約3000万頭)としても知られるが、先進国の中で経済成長率が断トツだということはあまり知られてこなかった。
3月に発表された経済協力開発機構(OECD)の経済成長見通し(中間報告)をはじめ、ここ数年の各国際金融機関算出の成長拡大幅で、米国やカナダが2%台、日本やユーロ圏全体が1%台に甘んじる中、ニュージーランドは3%(2015年、IMF=国際通貨基金)から減速するものの、2016年は約2.8%、今年は約2.7%(いずれもIMF)の成長が見込まれている。
そんな経済見通しが発表された先月末、ニュージーランドは、中国が目指す現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に協力することで中国と一致し、覚書などに署名した。
中国の「一帯一路」に先進国で初めて署名
ニュージーランドの一帯一路への協力署名は、「欧米先進国で初めて」(中国新華社)という。
中国の狙いは、ニュージーランドとライバル関係にある米国の長年の同盟国のオーストラリアを牽制するだけではない。
オーストラリアにとって中国は最大の貿易相手国。難民問題で対立し、同盟関係に亀裂が生じている米豪関係の切り崩しも同時に図る、したたかな中国の「オセアニア包囲網戦略」が見え隠れする。
そうした狙いから、中国は「キーウイ(ニュージーランドのこと=特に人やNZドルなど)との蜜月」を今後、深めていく計画だ。
3月末、ニュージーランドの首都・ウエリントンで会談した中国の李克強首相とニュージーランドのイングリッシュ首相だが、両国は4月25日にも、現行2国間の自由貿易協定(FTA)の改定協議を行う予定だ。
李首相は「(中国と各国間の協定の中で)最も進歩した水準になるだろう」とした上、「そのレベルは、先進国間で締結された同様の協定で初めてのものになる」と強い期待感を示す。
また、一帯一路構想の本来の目的である南シナ海の軍事拠点化への国際社会からの批判に関しては、「(領有権問題に関する)関係国との交渉はスムーズに進んでいる」と豪語した。
一方、ニュージーランドは、一帯一路への協力表明に加え、中国人に対する「5年間有効のマルチビザ」の発給を同時に発表。対象となるのは観光、親族訪問、ビジネス目的の渡航。
毎年2桁増で急増し、「2020年までには中国人観光客の支出が現在トップのオーストラリア人観光客の支出を抜き、最大の観光収入源になる見込み」(ニュージーランド観光局)から、中国人旅行者への異例ともいえる「特別待遇」を決めた。