「2035年までのロシア連邦のエネルギー戦略」と題された政府令原案の検討がロシア政府内で続けられている。今後の20年を見据えたエネルギー資源の需給諸予測とそれに対応する政策を列挙したもので、仕上がりの暁には、その作成時点でのロシア政府の見方や考え方を知るうえで重要な文書ではある。
しかし、その第1次原案が2014年に作成されてから既に3年近く経ても、中身が一向にまとまらない(参照=http://www.rbcplus.ru/news/58f2f2d77a8aa9753285cd3a)。
これまでに、第1次に始まり何度か原案の改訂版が発表されているから(最新はこちら=http://minenergo.gov.ru/node/1920)、むしろ過去3年の間の検討過程で政府内の見解がどう揺れ動いてきたか、を意地悪く観察する方に意味が生まれているほどだ。
1年先の原油価格ですら誰にも予想できないのだから、20年後のそれに関係省庁間のコンセンサスが生まれるべくもなく、神学論争に明け暮れていたら永遠に結論など出ない。
高度成長は夢のまた夢
そして、それだけ生真面目に取り組んでも、2003年や2009年に出された過去の「エネルギー戦略」は、原油価格の不安定な上昇・下降の動きの中で、予測としては直ぐに役に立たないものになってしまっている。
それを百も承知で取り組まねばならないのだから、政府関係者の苦労たるや、である。
それでも何とか大体の一致を見ている骨格らしきシナリオを探し出すと、国内需要が大きくは伸びず、資源生産はアジア太平洋地域向けの輸出が牽引する、という点が浮かび上がる。
2次エネルギーの電力の需要は、これから先20年で今より1.3~1.4倍(1.38~1.47兆kWh)に増えると予測されている。2009年の時点では2030年で電力需要が1.7~2.1倍(1.7~2.12兆kWh)に増えると踏んでいたのだから、過去8年ほどの間にロシア経済の伸びに対する見通しが大きく引き下げられたことが見て取れる。
現下でマイナス成長は脱しつつあるとはいえ、高度成長の夢などどこを探しても見当たらない今の雰囲気をそのまま反映しているようだ。
1次エネルギーの石油・石炭・ガスについては、いくつか条件の下に今後20年で生産の増加あるいは一定水準維持が目標とされる。それは主として輸出の伸びで達成され、さらにその輸出はアジア・太平洋地域向けで大きく伸びることが前提になっている。
つまりは、今のロシアのエネルギー政策の根幹は、「東進政策」の実現を前提に組み立てられているわけなのだ。