欧米でヒトラー本が売れる理由
昨年1月に再出版されたナチス・ドイツの独裁者ヒトラーの自叙伝的著書「Mein Kampf」(わが闘争)が1年間で8万5000部売れ、ベストセラーの仲間入りをしている。
なぜ、こんなに売れるのか。ヒトラー本はドイツでは発禁本ではなかったのか。
ドイツの識者は、「極右が台頭する今こそ、ドイツ人はヒトラーが引き起こした歴史を再検証し、全体主義の誤りを見つめ直しているのだろう」とポジティブなコメントをしている。
果たしてそうなのだろうか。この本を秘かに「経典」にしている輩は皆無なのだろうか。カギ十字の旗を誇らしげに掲げている「極右」の若者の映像を見るとそんな疑問が沸いてくる。
今年初め、スーパーの雑誌スタンドに料理やスポーツの雑誌に混じってヒトラーの本があるのに気づき愕然とした。米国はヒトラーには厳しかったのではなかったのか。
1995年、ホロコーストを否定する記事を掲載した日本の雑誌「マルコポーロ」が米ユダヤ人団体「サイモン・ウィーゼンタール」から激しい抗議を受け、自主廃刊に追い込まれたことがあった。
ロサンゼルスに本部を置くこの団体は、世界中に網を張り巡らして監視の目を光らせ、ホロコースト否定の動きを探知すると、最高幹部が自ら乗り込んでいく。法的措置をちらつかせながら徹底的に否定論者を追い込めるのだ。
その米国でヒトラー本が売られていることに違和感を覚えた。
問題の本は、ニューズウィーク誌の「スペシャル・エディション」と銘打った、96ページのモック本だ。タイトルはずばり、「Hitler: The Evolution of Evil」(ヒトラー:悪の進化)。
ニューズウィークは2016年にもヒトラー本を出版していた。タイトルは「Hitler: Can his evil legacy ever be defeated」(ヒトラー:悪のレガシーは打ち負かすことができるか)。