露大統領に「やめろと言った」 オバマ氏、サイバー攻撃の報復宣言

ロシアに対し、サイバー攻撃の報復を宣言する米国のバラク・オバマ大統領〔AFPBB News

「この時期」にプーチンを奥座敷に上げた安倍

 ロシアによる2014年3月のクリミア半島(ウクライナ領)併合以来、緊張している米ロ関係は、ロシアのシリア内戦への軍事介入、そして2016年の米大統領選への「ハッキング疑惑」で最悪の状況下にある。

 その最中、ウラジミール・プーチン大統領が訪日した。米国務省報道官は、「(日ロ首脳会談は)国家が下した最高決断だ」と表向き静観する構えを見せたが、その胸の内は穏やかではなかった。

 同盟国日本が「対米スパイの最高司令官」を奥座敷にまで招き入れて、日ロ関係強化を謳い上げたのだから。

 国務省元高官の1人は、筆者に米国のホンネをぶちまける。

 「安倍(晋三首相)は地元の山口県長門の温泉にまで招き、土産の1つも持たずにやって来たプーチン(大統領)をおもてなした。ところが案の定、まんまと騙された。期待した北方領土の返還は一歩も進まず、その北方領土の開発のために日本にカネと技術を出す約束までさせてしまった」

 「プーチンは大したやつだ。欲しいものは必ず掠め取る。外交経験ゼロのドナルド・トランプ(次期大統領)もカネだけでつながる親ロ派のレックス・ティルーソン(次期国務長官)もせいぜい騙されないように注意することだな」

ヒラリー落選を狙ったロシアのスパイ大作戦

 それにしても、ロシアは2016年の米大統領選挙になぜこれほど露骨に干渉したのか。百戦錬磨のヒラリー・クリントン氏が大統領になられたのではやりづらいと見たのか。大口は叩いているが外交ど素人のトランプ氏の方が与しやすいと判断したのか。

 つくづく大胆な対米戦略を考えついたものだ。バラク・オバマ大統領は12月16日、任期最後となる記者会見でこう言い切った。

 「ロシアがサイバー攻撃を実行したことに確信を持っている。プーチン大統領なしに(サイバー攻撃のような)重要なことは実行されない。何らかの形で報復する」

 一国の大統領が名指しで他国の大統領をこれだけ非難するのは異例なことだ。米議会も黙ってはいない。

 共和、民主両党の重鎮、ジョン・マケイン(共和党、アリゾナ)、リンゼー・グラハム(同、サウスカロライナ)、チャック・シューマー(民主党、ニューヨーク)、ジャック・リード(同、ロードアイランド)各上院議員は12月18日、共和党トップのミッチ・マコネル院内総務に書簡を送り、ロシアによるサイバー攻撃疑惑を調査するための特別調査委員会の設置を要請した。