11月15日、ロシア軍がシリアでの大規模な空爆を再開した。これはトランプが米大統領選に勝利したことを受けて、プーチンが素早く動いたということにほかならない。
トランプ勝利については、米本土で反対デモが激化するなどの余震が続いているが、国際政治では、すでにその影響が現実に出てきているのだ。
矛盾したトランプの安全保障政策
その背景を見ていく前に、まずはそもそもトランプの安全保障政策について考えてみたい。
トランプの安保政策は、現時点では「未知数」ということに尽きる。選挙戦期間中は、オバマやヒラリーへの批判ということもあったろうが、思いつきのような意見を連発した。米国民の生活に直結する移民問題や保護貿易などの分野には独自の急進的な主張があったが、安全保障は専門外であり、選挙の主な争点でもなかったから、それほど力を入れているようには見えなかった。
選挙戦期間中のトランプの、安保分野での主な主張は以下のようになる。
「欧州やアジアで軍事的役割を縮小し、同盟国にコストを支払わせる。支払わないなら米軍撤退も考える」(日韓などの核武装容認は後に否定)
「アメリカに関係ない紛争からは手を引く」
「強いアメリカの復活のため軍備を大幅に増強する」
「ISは殲滅する」
「イランは信用できない」
「イラクから米軍を撤退させるべきではなかった」
「プーチンと連携したい」