ナチスの栄華盛衰を描きながら、ナチスに立ち向かった人たちの記録を描いている。欧州で吹き荒れている極右現象への警鐘を打ち鳴らした内容になっている。

トランプを取り巻く側近の中に「極右」

 ニューズウィークがなぜ、昨年、そして今年とヒトラーものを立て続けに出しているのだろう。

 なぜ、この時期にヒトラー本が密かなブームを呼んでいるのだろう。社会宗教学者のディクソン・ヤギ神学博士はこう分析している。

 「欧州での右翼政党の躍進、極右団体の政治活動、そして米国では極右に囲まれたドナルド・トランプが大統領になった。こうした政治状況とヒトラー本が出版されていることとは無関係ではない」

 「トランプの周りにはスティーブ・バノン(上級顧問兼首席戦略官)やステファン・ミラー(政策担当上級顧問)といった『アルト・ライト』(極右)と深い関わり合いを持つ人物が蠢いている。彼らの主義主張は白人優越主義、反ユダヤ、反有色人種。その行きつく先はネオナチになるかもしれない」

 歴史を振り返えれば明らかなように、ヒトラーを生み出したのはポピュリズム(大衆迎合主義)だった。ナチス党は選挙で堂々と選ばれて政権の座についた。

 ヤギ博士はさらに続ける。

 「第1次世界大戦で負けたドイツの国民はドイツのアイディンティを取り戻す指導者を求めていた。そこにヒトラーが現れたのだ」

 「反エスタブリッシュメント(反既成勢力)を掲げる一般大衆の期待を一身に集めてあれよあれよという間に大統領に選ばれたトランプは、ヒトラーが総統になってしまったプロセスと似通っている」

 「トランプに警戒心を抱いているリベラル派はヒトラーがどんな人物だったのか、改めて知りたくなっているのではないだろうか」