第1に、ジェフ・イェーガー少佐の論説にあるような「睡眠トラッカー」の導入である。

 この種の装置は5000円程度で良い性能が手に入るので、事務官を含めて25万人弱の防衛省・自衛隊に配布しても13億円以下で済む。来年度予算における10式戦車(8億円)の調達を2台減らすなり、ほとんど役に立たない予備自衛官制度の予算80億円から一部を転用するなりすれば、すぐできるはずである。

 第2は、仕事を無限に増やすような非効率な組織文化の改革である。

 自衛隊は仕事が無意味に丁寧すぎる部分がある。例えば、中央観閲式では、戦車・装甲車・高機動車をいちいち隊員が手で再塗装している。しかも、ムラができれば、塗装を剥がしてやり直す作業を繰り返し、最後には「つや消し」を施すというガンプラのようなことをやっている。観閲式のベンチやトイレなどの会場設営と撤収にも、約2カ月もかかっている。

 こうした無意味な慣習は排すべきだし、自衛隊の広報イベントの実施や準備はできる限り民間に委託するなり縮小が筋だ。実戦に向けた取捨選択による業務改革が必要である。地元のお祭りの手伝いや面子のための演習のような優先順位の低い任務の縮小・廃止による負担軽減も実施すべきだろう。

 第3は人事制度の改革である。自衛隊では長い幕僚(指揮官を支える幹部)時代を経てから指揮官になるため、指揮官になっても幕僚気質が抜けない人物がよく見受けられる。要するに、いつまで経っても「優秀な部下」のままだということである。こうした上司はしばしば自分にも部下にも厳しく、部隊の寝不足を加速する。指揮官を歴任するようなキャリアプランを設け、指揮官気質の指揮官を増やしていくべきだろう。

 以上はあくまでも試論だが、これを機に、自衛隊員や防衛省職員が、誰かのメンツや自己満足のための無意味な仕事に追われることなく、良質な睡眠によって高いポテンシャルを発揮できるようにするための議論が高まることを祈念してやまない。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]