米陸軍よりひどい自衛隊の睡眠不足

 以上が米陸軍ジェフ・イェーガー少佐らによる主張の概要である。

 こうした論考から、「米軍も寝不足であり、自衛隊同様に対策はまだ進んでいない」と捉えるのは大きな間違いだ。米陸軍は既に大々的な睡眠レベルの調査を行い、そのための施策「3本の能力プログラム」を実行に移している。そして、現役の少佐が事実上の準機関紙でこのような問題提起をしていることからして我が国のはるか先を行っていると言えよう。

 対して自衛隊では、こうした調査もプログラムも一切なく、現職の自衛官が改善を求める声を挙げたり、議論することもない。あまつさえ、自衛隊における事実上の準機関紙「朝雲」は、「有事はもちろん、平時の訓練でも『時間が来たので寝ます』というわけにはいかないのは確かで、改善は至難だ」などと述べている。こうした無益で時代錯誤の思考がまかり通っているのが現在の自衛隊とその周辺である。

 それを象徴するエピソードはいくらでもある。例えば、海上自衛隊初の女性艦長、大谷三穂二佐は日経新聞のインタビューに対して「昼夜なく報告を受け、ずっと寝不足・・・」であると答えている。大谷艦長は防大に入学した女性の一期生であり、周囲からの評価も極めて高く、女性艦長第一号であることから組織的に期待されている逸材であることは明らかである。その彼女をして、こうであることは、どのような組織であるかは分かる。

 実際、海上自衛隊の艦艇部隊の幹部の睡眠時間が平均2時間であることは珍しくない。日米共同演習では、交代制と暖衣飽食の米海軍に海上自衛隊が徹夜と握り飯で対抗し、初戦で圧倒するものの、最終的にはヘトヘトになって敗北することがままあるという。また地方の基地では、キングカズでもない40代の佐官が夕方まで競技会に向けてサッカーの練習を行い、5時に仕事を再開し、部下に先に帰るのを許さないといった話も聞かれる。

 日米共同演習等で交代制をとらず、やはり途中から壊滅していた陸上自衛隊は、近年、三交代制を導入した。しかし、平時や実働では導入されていないので、皮肉なことに演習時がもっとも寝られるということになってしまっている。

自衛隊が採るべき3つの対策

 では、どうすれば良いのだろうか。ここでは筆者が考える3つの対策を提案したい。