STS-134ミッションで、国際宇宙ステーションに取り付けられた宇宙線観測装置「AMS」(2011年7月撮影)。(写真:NASA

「ダークマター」、またの名を「暗黒物質」という、この何だか怪しい響きのするモノは、宇宙物理の長年の謎でした。

 この正体不明の物質は、宇宙空間を漂っているはずなのに、可視光も電波も出さず、望遠鏡や観測装置を向けても捉えることができません。そのため、「見えない物質」という意味で、「ダークマター」とか「暗黒物質」と呼ばれます。SFにそのまま使えそうな素晴らしいネーミングです。

 2016年12月8日、国際宇宙ステーションに搭載されている宇宙線観測装置「AMS」のチームが記者発表を行ないました。その観測データには、ダークマターの形跡が見られるというのです。

 これまでどんな観測装置もすり抜けてきたダークマターが、ついに捉えられたのでしょうか。長年の謎、ダークマターの正体が明かされる時が来たのでしょうか。解説しましょう。

宇宙線検出装置「AMS」

 AMS(Alpha Magnetic Spectrometer)は、2011年5月16日(標準時)、スペースシャトル・エンデバー号で打ち上げられ、国際宇宙ステーションに取りつけられた、宇宙線検出装置です。

STS-134ミッションにおける、スペースシャトル・エンデバー号の打ち上げ(2011年5月撮影)。(写真:NASA

 宇宙線とは、宇宙空間を光速に近い速度で飛んでいる粒子です。粒子の種類は陽子、電子、原子核などさまざまです。人類が実験室で見たことのない未知の素粒子も飛び回っていると考えられます。