手術中、執刀医がデバイスに触らず手振りだけで、モニターに表示された医療画像を操る。赤外線を駆使して手術前に腫瘍の形状や位置を画像に描出する──。

 IoTを駆使したそんな近未来の手術室の実現に向けて、東京女子医科大学の先端生命医科学研究所の村垣善浩氏グループが臨床研究を進めている。

 12月1日、インテルは「ヘルスケアIT分野に関するプレス・セミナー」を開催した。IoT時代におけるビッグデータを活用した医療サービスの向上や、最新テクノロジーを利用した医療機器など、インテルが推進しているヘルスケアIT分野への取り組みを紹介。冒頭の“近未来型の手術室実現に向けた臨床研究”は、その中で紹介された日本における最新の活動事例である。

術中に手振りで複数のCT画像を操作

 現在の医療現場では、MRIやCTの画像はデジタルデータとして「PACS」と呼ばれる医療用画像管理システムに格納される。村垣氏によると、フィルム時代は医療用画像を簡単に見ることができたが、フィルムレス化された現代はサーバー内のデータ画像を気軽に取り出すことができず「逆に医療従事者のストレスになっている」という

 滅菌された手術室では、手術をする医師はデバイスやキーボードに触ることができない。そのため医療用画像を見たいときには、看護師やスタッフに指示をして、PACSから画像を取り出す手間を必要としているのが現状である。

 そこで、村垣氏は、人の動きや奥行きを赤外線で検出してデータ化するインテルの「RealSense」という技術に着目。この技術を応用して、執刀医が手振りでPACSのビューワーを操作できる仕組みの開発を進めることとなった。