三角測量から三辺測量、そしてGPS測量へ

 三角関数が地球上と天球上における測量のために作られた言葉であることを連載「三角関数が面白くなる4000年の歴史旅行」で取り上げました。

 基線の距離だけを計測すればその後は角度だけを繰り返し測ることで到底計測できないエリアの正確な地図を作り上げる方法が「三角測量」です。「角度」を測量し、測量不可能な遠く離れた2地点の距離を数値として弾き出しててくれる道具が三角関数だということです。

 そこにあるのは、できるだけ大きな領域かつ正確な地図を作りたいという人類の願いです。2000年にわたり続いた「三角測量」は、現代では電磁波測距儀や光波測距儀による「三辺測量」に取って代わられ、地図の精度は大きく向上しました。

 そして現在、「GPS測量」が誕生し、数cmの精度で地上の位置を知ることができるようになり、「G空間(Geospatial空間)」と呼ばれる紙の地図を超える新しい情報が誕生しました。「Google EarthⓇ」がその例です。誰もが地球上の正確な位置を瞬時に知ることが可能になりました。

 ここにその詳細を語るのは私の役目ではありません。なぜ2000年続いた三角測量が終わりGPS測量が実現したのか、測量の発展の流れを俯瞰すると私の中に見えてくる風景をスケッチしてみようと思います。

三角関数が導いたもの

 そもそも三角関数は関数などではありませんでした。古代ギリシャと古代インドで誕生したのは三角比でありとその数表です。16世紀になっても三角関数まだ三角比のままでした。ただ三角比の数表の精度は格段に上がり10桁のものもめずらしくないほどに発達を遂げていました。

 そのせいで三角比の計算量が処理し切れないほどに膨れ上がり、そのことがネイピアによる対数誕生のきっかけになったのでした。この天文学的計算克服のためにネイピアが作り出したのも対数関数ではなく、対数のアイデアと数表でした。連載「対数の発見がもたらした大航海時代と技術革新」を参照。

 ネイピアの対数の神髄がようやく解明されたのがネイピアの130年後のことです。天才オイラーの手によってネイピアの対数の中からネイピア数eが発掘されました。

 ネイピア数eとともに微分積分が本格的に発展していくことになり、オイラーは関数概念の完成へ向けた思いを強くしていくことになりました。連載「人類最高傑作、微分積分はこうして生まれた」参照。

 しかしそれでもまだ関数概念の完成には到りませんでした。オイラーに先立つニュートンとライプニッツは微分法と積分法というそれぞれに発達してきた理論が実は表裏一体であることを見抜き「微分積分学(calculus)」を作り上げました。