過去15年間における日本企業(金融を除く全業種)全体の粗利益は10%しか増加していない。この間、売上高は横ばいで、日本企業はまったくといってよいほど成長することができなかった。仕入れ価格が安くなっていることを考えると、付加価値の高い製品やサービスを生み出したのではなく、デフレに助けられた面が大きいことが分かる。

 一方、日本企業は同じ期間でむしろ従業員数を増やしている。統計上の総労働時間は多少減っているので、労働投入量全体は多少減ったかもしれないが、同じ売上高を維持するのに、より多くの人員で業務を回すという状況になっていることは間違いない。

 企業活動の集大成は最終的にはGDPの数値に反映されてくるわけだが、当然のことながら、日本のGDPはこの間、ほとんど横ばいであった。これに対して諸外国はGDPを1.5倍から2倍に拡大させており、付加価値も同じように伸びているはずだ。こうした状況を見る限り、日本の生産性が低いのは、企業が生み出す付加価値が増大していないことも大きな要因となっている可能性が高い。

 先ほどの厚生労働白書でも似たような結論が得られている。各国の労働生産性の上昇要因を比較すると、他の主要国は生産性の上昇分のうち多くが付加価値の増加によってもたらされている。一方、日本における付加価値要因はマイナスとなっており、生産性が上昇したのは物価要因がほとんどであった。

ビジネスモデルの転換に避けては通れない雇用の流動化

 労働時間が長いことと、付加価値が低いことの両方の要因によって生産性が伸び悩んでいるのだとすると、少々やっかいである。