では他国と比較した場合、日本の労働時間はどうなのだろうか。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の平均年間総労働時間は1729時間で米国やイタリアとほぼ同水準である。英国は1677時間と少し短くなり、フランスは1473時間、ドイツは1371時間と大幅に短い。

 各国の調査が同一条件で実施されているわけではないので、厳密には国際間比較できない数値だが、ある程度の参考にはなる。労働時間の長さという点では、日本人は長時間労働の部類に入るが、この統計を見る限り、日本だけが突出して労働時間が長いというわけではなさそうだ(もちろんこれについてもサービス残業の可能性を考慮する必要がある)。

 ところが、労働政策研究・研修機構の研究では、日本は週49時間以上の長時間労働をしている人の割合が20%を超えておりかなり高い。米国は16.6%、英国は12.5%、ドイツは10.1%、フランスは10.4%である。この調査は世帯に対するものなのでサービス残業の分までカウントされている可能性が高い。

 総合的に考えると、やはり日本の職場は長時間労働体質となっており、これが生産性を引き下げている原因の1つである可能性が高い。また統計上の労働時間が過去15年間でそれほど変わっていないことを考えると、長時間労働は今に始まったことではなく、基本的な構造は変わっていないとも判断できる。

日本企業が生み出す付加価値は低い

 一方、日本企業はどのくらいの付加価値を生み出しているのだろうか。企業が生み出す付加価値の定義は様々だが、大雑把には財務諸表における売上総利益(いわゆる粗利)として差し支えない。