ロシア・モスクワ、赤の広場のGUMデパート(写真はイメージ)

 昨年来、私たち日露貿易関係者の最大の心配は、貿易量の減少、特に日本からの輸出の減少である。

 日本から輸出金額で最大の割合を占める自動車は、2014年度から継続して対前年度比マイナスが続いている。特に中古車の輸出は2015年からは壊滅的とも言える状態に陥り、廃業する輸出企業も多い。

 こうした数字もさることながら、私たちの心配はもっと深いところにある。

 経済制裁を主因とする不況であれば、経済制裁が中止されれば、ロシア経済は元に戻る。しかし、2014年夏に始まり、この夏でいよいよ3年目に突入する西側の経済制裁とこれに対抗するロシアの自主的輸入制限は、ロシアの産業構造を変えつつある。

ロシアの産業構造が激変中

 一例を挙げると、長らく死に体だったロシアの機械産業は、2014年以来、長い睡眠から目覚め、企業数も大きく伸びている。

 これは国家運営のため、必要不可欠な機械、部品は国産化してでも、供給を絶やすことはできない、という輸入代替の必要性から生じた復活と見ることができる。

 本年5月に開かれたロシアの工作機械関連の展示会としては最大級のモスクワ国際金属加工展には、記録的な数のロシア企業が参加した。

 商品的にはソ連時代に逆戻りしたような古典的な機械が新製品として展示されてるなど、技術的に見るものは少なくても、この精神的独立性の復活は大きく、このまま行けばかなり短期間で西側先進国並みの機械を製造することが可能になるだろう。

 日露貿易関係者の心配はここにある。

 ロシアが西側と同等と言える商品を今後数多く生み出すようになると、その分、日本からの輸出は減少、現地生産の必要性も低下していくのではないか、ということである。