「したたか」「二枚舌」「ズル賢い」――。
(その国の人の)小柄で華奢でおとなしそうな外見とは裏腹に実は、大国・中国に、そう言わしめるほどの小国がアジアにある。
したたかな朝貢外交を展開し、中国のみならず、米国、フランス、ロシアに至ってまで、「山椒は小粒でもピリリと辛い」と知らしめているのが、実はベトナムだ。
1000年にもわたる中国の侵略や支配、約70年にも及ぶフランス下での植民地支配に屈せず、さらには20年続いた米国とのベトナム戦争、その後は中越戦争を経験した。
何度も痛い目に遭わされてきた中国
「China and Vietnam: The Politics of Asymmetry(中国とベトナム、その非対称な政治)」の著者で、米国における中国政治外交の専門家、ブラントリー・ウォマック博士は、「中国の力は、再三、ベトナムという岩の上で砕け散ってきた」と言う。
ベトナム戦争でロシア軍や米軍が置きざりにした戦闘車など、お古の兵器を駆使して中国に勝利してきたのである。
ベトナムの強さの秘密は、強靭な忍耐力と精神力に裏づけられたべトコン戦術の「硬」と、朝貢外交で至れり尽くせりの「軟」を、1つのコインの裏表のようにして巧みに使い分けながら、超大国を翻弄させる戦略にある。
また、戦争で1つの大国と戦う一方で、同時に別の大国を引き込むしたたかな戦術も強さの秘訣と言える。
ベトナム戦争では、中国と旧ソ連の超大国を激突させ、一方で米国との闘いのための後ろ盾として両国の支援を引き出した。日本などより、ずっと外交上手と認めざるを得ない。
そんなベトナムが、日本の伊勢志摩開催のG7サミット(主要国首脳会議)では拡大会合で初デビュー。4月に就任以来、初来日を果たしたグエン・スアン・フック首相が安倍晋三首相と初の首脳会談で国際舞台で日越の蜜月を演出した。
G7開催前には、米国のバラク・オバマ大統領がベトナムへの歴史的訪問を実現。