アメリカ海軍太平洋艦隊は、5月10日、南沙諸島のファイアリークロス礁周辺12海里内海域に駆逐艦「ウィリアム・P・ローレンス」を派遣した。2015年10月の第1回目、そして今年1月の第2回目に続く、第3回目となる「FONOP」(航行自由原則維持のための作戦)の実施である。
ほとんど効果がない散発的なFONOP
今回のFONOPの対象となったファイアリークロス礁は、中国が人工島を建設しており3000メートル級雨滑走路の運用も開始されている。そしてフィリピン、ベトナム、そして台湾も、この環礁に領有権を主張している。
アメリカ政府によると、「ファイアリークロス礁の領有権を主張している国々のうち、中国、ベトナム、台湾は、ファイアリークロス礁周辺12海里に艦船を近づける場合には、事前にそれぞれの政府に通告するよう求めている。だが、そのような要求は国際海洋法に違反している」という。そこで、アメリカは「国際海洋法に反して自由航行原則を制限する主張に自制を求めるために、FONOPを実施した」ということである。
つまり、今回のFONOPはファイアリークロス礁での中国による人工島建設や本格的航空基地に対する軍事的威嚇を加える意図は毛頭なく、またアメリカの伝統的な外交原則に遵ってファイアリークロス礁の領有権紛争に介入するものでもない、というのがホワイトハウスの建前である。