9日投開票のフィリピン大統領選は、実績はあるが暴言が絶えない“フィリピン版トランプ“と言われるロドリゴ・ドゥテルテ・ダバオ市長が、蔓延する犯罪や薬物問題を一掃した強いリーダーシップや現政権への不満を背景に、世論調査の支持率で他候補を大きくリードし、選挙戦を有利に展開。
フィリピンでは勝者決定には多数代表制が採用され、過半数を超えたか否かに関係なく、得票率が最も多かった候補者が次期大統領の座を勝ち取ることになり、(日本時間9日深夜の政府非公式発表や政府認可選挙監視組織「PPCRV」などによる情勢から)ドゥテルテ市長がフィリピンの新大統領に選ばれることが確定的となった。
一方で、教会で拾われた清廉潔白のイメージが売りの”元孤児“の女性上院議員のグレース・ポー氏や、アキノ大統領の後継指名を受け選挙戦終盤、組織力と資金力で支持率をじりじり上げてきたマヌエル・ロハス前内務・自治相は、結局、獲得票が伸びず、ドゥテルテ市長の”強固な指揮能力と強烈な個性”の前に自滅した格好だ。
若い有権者が選挙を左右
フィリピン選挙は近年、「ネット選挙」とも言われ、支持率だけでなくネット上のフォロワーの行方も注目され、ソーシャルメディアに左右される有権者の半数以上を占めるミレ二アル世代の若年層が投票結果のカギを握る。
フィリピンの選挙管理委員会(Comelec)によると、今回の登録有権者数は約5450万人。そのうち1980年代から2000年代初めに生まれたミレニアル世代は有権者数の約半分を占めている。
さらに、17歳から34歳までの約2500万人のミレニアル世代のうち、20歳から24歳(約800万人)、25歳から29歳(約740万人)という20代がその半数以上を占めている。
また、フィリピンの投票率は2013年(中間選挙)が約80%にも達した。実に有権者5人のうち4人が投票している勘定だ。
2014年の衆院選で(小選挙区)約53%と戦後最低の投票率を記録し有権者の半分以上が棄権する日本とは大違い。政治参加への関心が高く、とりわけ若い人の積極性が目立つ。
現在、米国でも大統領予備選の真っ只中だが、2008年や2012年の大統領選では、現大統領のバラク・オバマ氏がソーシャルメディアを駆使し、SNSマニアの18歳から30代の若い世代の有権者の絶大な支持を集め当選したことは記憶に新しい。