今、英国で最高に熱っぽく語られているのは、EU(欧州連合)離脱の是非ではない。英国国民、いや世界のスポーツファンが注目する英国発祥のサッカーの話で持ちきりなのだ。
と言うのも、世界最高峰レベルのプロリーグ、「プレミアリーグ」の世紀の大番狂わせの歴史的な優勝争いが大詰めを向かえ、その行方を世界が固唾を呑んで見守っているからだ。
注目の的は、英国メディアからも、日本も当然、タイのメディアからも(理由は後ほど・・・)大絶賛の日本代表FWエース、岡崎慎司選手がFWを務める「レスター・シティ」。
現在(シーズン戦6節を残し)、クラブ創立130年を超える(創立1884年)歴史で初のプレミア制覇を目指し、優勝戦線を首位で驀進中、奇跡的な快進撃を続けている(関連記事1、2)。
超弱小クラブが大変身
過去に一度も優勝経験のないアンダードッグの「レスター・シティ」はもともとは、リーグ残留を最大の目標に掲げ、一時は経営難にも陥った“超弱小クラブ”。2014年、プレミアリーグに悲願の昇格を果たすまで2部と3部を行ったり来たり。
ちょうど1年前はリーグ最下位に一時転落、再び2部降格もささやかれた中、今やその頂点を極めようとしているのだから、その“ミラクルパワー”は驚異的だ。
同リーグではここ数十年、日本代表MF香川真司の古巣「マンチェスター・ユナイテッド(MU)」をはじめとする「ビッグ4」が(最近では「ビッグ6」)同リーグのビッグクラブ至上主義ともとれる豊富な資金力を背景に破格の移籍金で世界のスター選手を次々に買い漁り、“金満リーグ”とまで揶揄され、優勝を独占してきた。
こうしたビッグ4に比べ資金力の乏しいレスターが優勝すれば、20年以上に及ぶ同リーグ創立初の快挙となる。ひいては、イングランドスポーツ史上最大の奇跡が叶うという、まさに現代版「シンデレラストーリー」の行く末がかかり、世界のスポーツ界の目が釘づけにされている。
中でも、アジアでは英国以上に、その優勝戦が盛り上がっている。背景には、低迷する欧州経済に反して、成長続けるアジア経済を巻き込んだサッカービジネスの「アジア特化」によるグローバル戦略がある。
特に近年、欧州サッカーは、収益の柱である積極的な衛星放映権拡大を続けており、中でもプレミアリーグは突出している。その総収入額は約40億ユーロ(約6500億円)とも言われ、ここ約20年間に約5倍にも急拡大。
世界の10億人以上に視聴され、サッカーに限らず、全世界のスポーツリーグの中で最もテレビ中継の視聴者が多いと言われるこのプレミアリーグの成功を後押ししているのは、ほかでもない熱狂的なファンが8億人にも上るアジアの国々だ。