歴史を振り返ると、睡眠不足による意思決定のミスが損害もたらすことは過去にもあった。しかし現代戦では、兵士一人の行動が戦術レベル、場合によっては戦略レベルにまで大きな影響を与える時代になっている。
ソマリアではたった18名の戦死者と遺体が晒し者にされただけで、米軍は無様な撤退を余儀なくされた。第1次大戦のソンムの戦いでは両軍併せて100万人が戦死し、日露戦争の旅順要塞攻略戦では6万人の日本兵が死傷しても戦略レベルには大きな影響がなかった時代とは明らかに異なる事象である。
この背景には、少子化および寿命以外の死が稀になったこと、情報通信の発達が背景にある。要するに、特に先進国では死傷者に対する心理的な衝撃が大きくなっており、それがインターネットやテレビメディアの発達によって簡単に伝わり、どんどん増幅されて、当該国政府の戦争指導や政権の帰趨にすら多大な影響を与える時代になっているのである。
その意味で、いまや一個中隊、下手をすれば一兵士の一挙手一投足にすら、「状況によっては」政治的な意味が付きまとってしまっていると言ってよい。ゆえに、現代戦でこそ、指揮官が率先して十分な睡眠を確保し、政治的にも軍事的にも適切な判断を軍事行動で選択しつづける能力を維持しなければならないのだ。
自衛隊員、内局官僚の寝不足が招く日本の危機
睡眠不足の解消は日本こそ真剣に考えなければならない問題的である。
日本と中国は互いにちょっとでも打ち手を間違えれば、一気に日中間の外交レベルに影響し、下手をすれば戦闘になりかねない状況である。実際、6月9日に中国側の軍艦1隻が接続水域に侵入しただけでも大きなニュースとなり、与野党の議員が反応している。