ビジネス書の売り場に長年携わっている書店員の1人として、毎年楽しみなのがこの季節。昨年1年間に刊行された書籍の中から、優れたビジネス書を選出する「ビジネス書大賞」が発表されるからです。
ビジネス書大賞は、本屋大賞ほど一般読者に対してのインパクトは大きくないかもしれません。
しかし、ビジネス書を通じて時代の潮流を読み解くことができ、さらにビジネスの現場に応用が利くということで、多くのビジネスパーソンに愛されている賞です。
今年も、企業経営から、教育、サイエンスとジャンルの違うバラエティに富んだ作品がノミネートされており、ビジネスの現場でどれだけ多様化が進んでいるかを表しています。
※ ビジネス書大賞2016 受賞作一覧はこちら:http://biztai.jp/prize.html
難題を乗り越えるための「最高の教科書」
その栄えある「ビジネス書大賞2016」大賞に選出されたのが、『HARD THINGS』 (ベン・ホロウィッツ著、日経BP社)です。
シリコンバレーの立志伝中の人物である、著者のホロウィッツ。クラウド企業のラウドクラウド社やオプスウェアといったIT企業の創業に携わり、CEOを務めました。
しかし、その経営者人生は、決して順風満帆ではありませんでした。ライバル会社との死闘、ネットバブルの崩壊、株価の下落、最大手の取引先の倒産・・・。
これでもかというほど幾多もの難題(ハードシングス)が彼を襲い、選択を一歩間違えれば、たちまち奈落の底へ突き落される状況が続きます。
ホロウィッツが、持てる方法を駆使して次々に難題を乗り越えて行く様子が、当事者ならではの生々しい言葉で書かれ、臨場感がひしひしと伝わってくるのです。