2月にしては温かい日曜日、約3万人が参加する大イベント、東京マラソンの号砲が鳴り響きました。リオデジャネイロオリンピックの選考会を兼ねたこの大会では、日本人選手の活躍が期待されていました。しかし、結果はご存じの通り。
一般参加の高宮佑樹選手の8位が日本人最高位で、オリンピック代表に内定するまでには至らず・・・。最後の選考レースの結果次第では、男子マラソンは、リオデジャネイロオリンピックにエントリー数の上限の3選手を送り込めない可能性まで出てきました。
崖っぷちアラフィフ女、再び走り出す!
その東京マラソンのシーンから始まる物語に、『アレー! 行け、ニッポンの女たち』(こかじ さら著、講談社)があります。
女性初の部長が見えてきた主人公の小野寺かすみ。しかし、それを疎ましく思った社内勢力により、退職に追い込まれます。アラフィフ・未婚・子どもナシ。加えて無職。
先がまったく見えないかすみでしたが、知人の影響で、なぜかフランスのマラソン大会にエントリーしてしまい・・・。
この物語は、かすみを中心に、同僚だった3人の女性のそれぞれの姿が描かれています。結婚や出産、子育て、といった人生の転機に、会社から理不尽な扱いを受ける彼女たち。男女平等が謳われていても、実際は差別が根強く残っているのが、日本の社会なのです。
それでも現実と折り合いをつけ、みんなそれぞれ前に進んで行きます。そのリアルな人物設定は、出版社勤務を経て、フリーライターとして活躍している著者の実体験や取材の賜物なのでしょう。
物語の終盤、かすみは自分をリストラした前職の人事課長が、あるマラソン大会に出場していることに気がつきます。
親の仇のような人事課長。しかし、実際に走っているその姿を目にすると、かすみは意外に憎しみが薄れていることに気が付き・・・。