三角関数から見えてくる数学誕生物語

 三角関数は初めから関数ではありませんでした。初めにあったのは三角比です。三角比は長い時間をかけて世界中を旅して、ようやく三角関数に変身したのです。

 というのは他人から見ると名称がその変化して見えるということであり、三角比は自分探しの旅を続けるうちについに自分の正体が関数であることに気づいたということです。

 では、ざっと三角比が辿った旅の道標を見てみましょう。

 天文学と測地学 → 角度(60進法) → 平面三角法誕生 → 惑星の運動と地図 → 球面三角法 → 三角比の数表精度向上 → ネイピアの対数と対数表誕生 → 小数点誕生 →  常用対数誕生 → ケプラー惑星の運動法則 → ニュートンとライプニッツの微分積分学誕生 → 双曲線の面積 → オイラーによる自然対数とネイピア数 → 指数表記 → 関数概念誕生 → 三角関数誕生

 この一つひとつを記述するだけでも1冊では到底足りない物語です。このすべての流れの概略だけを述べるのでさえ分厚い1冊の数学書になるでしょう。

 そこで、今回はその壮大な三角比の旅の始まりの物語として、古代ギリシャの三角法と私の三角関数との出会いを語りたいと思います。

奇跡の単位「角度」

 現代から過去を振り返ることで見えてくるのが単位の不思議です。現代において科学ともの作りがここまで発達している理由の1つが、長さの単位が「メートル」にほぼ世界統一されていることです。

 フランス革命の時代、ヨーロッパにはなんと40万種類もの長さの単位があったといわれています。これを見かねたフランスが国家の威信をかけて取り組んだプロジェクトが「子午線測量」です。世界統一単位を夢見たフランスはこの難事業を成功させ「メートル」が誕生しました。

 はたして「メートル」は経済、貿易、科学といったあらゆる場面における基本・基礎・基準となり現代社会を支える存在となりました。

 そんな中で数千年も前から発展し続ける分野があります。天文学です。