中国におけるビジネス上のリスクについての5回目は、中国の自然災害を取り上げる。
一般的に大国と言われる国では、自然災害が多いという傾向がある。中国は自然災害リスクのランキング(2015年)では世界171カ国中80位であるが、洪水、地震、台風等の風害、干ばつ、土砂崩れ、ひょう害等、多種多様な災害が発生している。
その中でも発生件数、経済的損失額共に突出しているのが洪水である。洪水に次いで経済的損失額が大きいのが地震だ。一般的に世界の大陸性地震の3分の1が中国で発生すると言われている。また、洪水に次いで発生件数、被災者数が多いのが風害である。この他、ひょう害も全土で頻発しており、人的被害の他、農作物、家畜等への被害の他、工場等の生産設備にも被害をもたらしている。さらに、最近ではPM2.5などの大気汚染の問題も深刻であり、健康被害への懸念が増大している。
今回は災害ごとに被害の内容や傾向などを中心に俯瞰してみたい。
長江、黄河でたびたび大規模な洪水が発生
洪水は中国における自然災害のうちで最も発生頻度が高く、また被害も大きい。過去には、長江・黄河等の大河川の氾濫による大規模な洪水がたびたび発生している。特に長江の中・下流域は、6~7月の梅雨、7~9月の台風による大雨により、洪水が発生している。また、黄河は夏から秋にかけて発生する豪雨、2~3月の解氷が原因となり、洪水が発生している。