外交的には成功のAIIB、問われる中国の運営能力

中国・北京の人民大会堂にはためく中国国旗(2012年11月13日撮影)。(c)AFP/Mark RALSTON〔AFPBB News

 個々の中国人はそれほど悪い人ではない。付き合いやすい人も多い。中国人を友人として持つ人も多いだろう。しかし、中国政府を見るとその発言や行動は途端におかしくなる。

 自分に都合のよい理由だけを並べ立てて非を認めない。一度言い出したら絶対に譲らない。現在、南シナ海で生じていることを思い浮かべれば、その異常さはすぐに納得できる。個人はよいのだが、政府となると極めて付き合い難い相手に変身する。

 なぜ、こんなことになるのだろう。不思議に思う人も多いはずだ。ちょっと穿った見方になるかも知れないが、筆者が専門とする食料生産の観点からこのことを考えてみたい。

中国の特異性

 人類が食料を生産する方法は大きく3つに分類できる。遊牧、畑作、コメ作である。日本はコメ作の国である。一方、モンゴルなど中央アジアの国々は遊牧によって食料を生産してきた。南ヨーロッパでは畑作が盛んだった。一方、寒冷で畑作だけでは十分な食料を確保できなかった北ヨーロッパでは、畑作と遊牧がまじりあった有畜農業が発達した。

 中国には2つの食料生産方式が併存する。黄河流域を中心とした華北は畑作。長江流域を中心とした華南はコメ作。インドでもガンジス川流域と南部の東側がコメ作、その他は畑作と2つのタイプの農業行われている。

 だが、インドがその歴史において現在のような1つの国であったことはない。常にいくつかの国に分かれていた。そのような目で見ると、長い歴史を持つ国で、同じ国の中に2つのタイプの農業が存在したのは中国だけである。