財閥総帥に実刑判決が下り、韓国経済界にまた衝撃が走った(写真はソウル市内)

 「経済に貢献したことを考慮して・・・」。韓国では長年、こんな理由で財閥総帥の犯罪に対する判決には決まって「執行猶予」が付いていた。何年かすると大統領特赦で罪がきれいに消えてしまうことが続いていた。だが、こうした「慣習」も過去のものとなりつつあるようだ。

 2015年12月15日午後、ソウル高等裁判所から車椅子に乗った男が出てきた。黒いニットキャップにマスク姿の男は、取り囲んだ記者たちの質問に何も答えずに、待たせていた車に乗って立ち去った。

車いす、マスク姿の男

 この男は、CJグループの李在賢(イ・ジェヒョン=1960年生)会長だ。この日、ソウル高裁は、李在賢会長に対して懲役2年6カ月、罰金252億ウォン(1円=10ウォン)の実刑判決を下した。

 李在賢会長は2013年、1600億ウォン規模の背任、横領、脱税で起訴された。会社の資金を流用したほか、仮名口座などを使って脱税し、さらに東京で不動産を購入した際にCJグループの現地法人に債務保証をさせていたことなどの容疑だった。

 会社も会社のカネも自分のものだという典型的な財閥オーナーの犯罪だった。1審に続いて2014年9月に高裁でも懲役3年の実刑判決を受け、大法院(最高裁に相当)に上告した。

 大法院は罪状のうち「背任」部分について、「金額を過大に算定した」として高裁判決を破棄し、差し戻していた。

差し戻し控訴審でも実刑判決

 12月15日には、この差し戻し控訴審判決が出たのだ。

 ソウル高裁は、「背任」については大法院からの差し戻しを受けて金額を改めて算出し、懲役が6カ月短くなった。しかし、横領と脱税についてはこれまでと同じ判断をし、実刑判決となったのだ。

 「予想を覆す判決で法廷内は一瞬静まり返った」。韓国のテレビニュースは一斉にこう報じた。そもそも判決に対する「予想」とはなんだったのか不明だが、韓国の産業界では実刑判決に衝撃が走った。それだけ「執行猶予が付く」という声が強かったことは確かだ。