7月9日に開催されたジャパンサミット2015(写真:エコノミスト・カンファレンス提供)

 エコノミスト・カンファレンス「ジャパンサミット2015」が7月9日、東京・ホテルオークラで開催された(JBpressはメディアパートナー)。一日中霧雨が降り蒸し暑いあにくの天気だったが、朝一番に行われた安倍晋三首相の講演が始まる前に席はほぼ埋まっていた。

 集団的自衛権を巡り国会審議が空回りするなか、一部では解散総選挙もあり得るという話も飛び出していたこともあり、メディアに用意された席は満杯で熱気が充満していた。そして始まった安倍首相の基調講演。

 「もはや経済問題は国会における政策論争にはならない」とアベノミクスに対する絶対の自信を示し、自らの政策がいかに成果を上げつつあるかを、ノートを取るのも難しいほどのテンポの速さで次々に披露していった。

 「野党が国会でアベノミクスを追及しようとすれば逆に私を援護射撃するだけ」と余裕そのものだった安倍首相の講演要旨は以下の通りである。

消極的な経営はもう許さない

●消費税を3%上げたことで景気が冷え国民のみなさんには心配をかけたが、今や完全に立ち直った。昨年に続き賃金は2%以上増えた。企業が利益を上げ賃金に回る。好循環が生まれている。

●足元の景気は年率換算で9%もの成長を続けている。税収は当初予算より4兆円近く増え、54兆円と21年ぶりの高水準。

●今年度はプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字半減目標を達成する予算を組めた。2020年のプライマリーバランス黒字化達成に向けた具体的な計画も6月に取りまとめた。

●60年間独占が続いてたガスや電力を自由化するエネルギー市場改革法案が成立した。医療保険制度の改革法案も成立した。60年ぶりの農協改革法案も衆院を通過した。

●6月からコーポレートガバナンスコードが2000社を超える上場企業に適用されるようになった。独立社外取締役を採用する企業はこの2年で倍増した。いまや191の機関投資家が英国生まれのスチュワードシップコード*1を受け入れている。

●内向きで消極的な経営はもう許さない。コーポレートガバナンスの強化で経営者のマインドを変えていかなければならない。日本の経営者が世界の荒海に打って出る、そういうマインドをこの日本に根づかせることが私の基本理念だ。

●100万人就業者が増えた。ありがたいことにそのうち90万人が女性だった。上場企業の女性役員は昔の6倍の勢いで増えている。女性、さらには外国人材の登用なくしてグローバルな戦いはできない。多様で柔軟な働き方を可能にしていくことが何より大切だ。

*1=2010年に英国で制定された金融機関を中心とした機関投資家のあるべき姿を示したもの。投資先の経営監視が不十分であったことがリーマンショックによる金融危機を深刻化させた反省に立ち作られた。スチュワードとは英語で執事の意。