エコノミスト・カンファレンス「ベルウェザー・シリーズ 日本~成長の糧として:アジア金融の挑戦」の事後リポート第2回は、『特別企画:アベノミクスと日本経済の可能性』と題されたセッション(5月30日開催)。

 登壇者は、経済産業大臣政務官の佐藤ゆかり氏、オリックス取締役兼代表執行役会長の宮内義彦氏、RBS証券チーフエコノミストの西岡純子氏、ライフネット生命代表取締役副社長(現社長)の岩瀬大輔氏。司会はエコノミスト誌東京支局長のタムジン・ブース氏。

自民党は構造改革・規制緩和のチャンスを生かせ

ブース まず経済産業大臣政務官の佐藤さんに、アベノミクスに対する見解をお願いいたします。

経済産業大臣政務官の佐藤ゆかり氏(撮影:前田せいめい、以下同)

佐藤 アベノミクスの「3本の矢」の1つは、大胆な金融政策です。これは黒田(東彦)日銀総裁にしっかりとやっていただいているところです。2つ目の矢の機動的な財政政策も、補正予算、25年度の当初予算が国会を通過しましたので、財政出動もこれからさらに実施に移っていく段階に入ってきています。

 そして最も大事なのが、3本目の矢の民間投資を喚起する成長戦略です。金融政策で流動性を大量に供給することは大事なことですが、それはあくまで必要条件であって、経済の回復に向けた十分条件というのは、財政も加えた、そしてさらに民間がテイクオフする形で、民間投資中心の景気回復にもっていかなければいけないということだと思います。

 1990年代を振り返りますと、財政出動は大型のものをバブル崩壊以降も行いましたが、財政乗数は平均するとこの間、残念ながら1.1と極めて低いものになりました。財政の効率が悪かったわけです。

 ですから今回のポイントは、金融緩和と財政出動の2本の矢を実施する上で、財政出動に伴う財政乗数を1.1からさらに上げていく。そのために新しい市場を創出し、あるいは産業を再興させる必要があります。

 そこで成長戦略が重要になります。成長戦略には3つの柱があります。1つ目は日本産業再興プラン、2つ目は戦略的市場創造プラン、3つ目は国際展開戦略。まずは日本産業再興プランです。

ブース 宮内さんは、構造改革、規制緩和の観点からアベノミクスをどう見ていらっしゃいますか。