企業の潤沢な資金をいかに設備投資に向けさせるかが成長のカギ

ブース 第3の矢について西岡さんはどのように評価されていますか。

西岡 成長戦略の中で、設備投資をいかに増やすのかということが、国の潜在的な成長率を加速させる意味で非常に重要だと思っています。

 結局、国の潜在成長率を上げない限りは世の中の資本は動きませんので、その意味で考えると、企業部門のいわゆるフリーキャッシュフローが250兆円以上あるという、その潤沢なおカネをいかに有効活用するかが一番重要なポイントだと思います。

RBS証券チーフエコノミストの西岡純子氏

 もちろん、こういう発想はこれまでもあったわけですが、実はこの点、宮内さんがおっしゃったデフレがインフレに変わるということが非常に重要なポイントです。

 デフレの局面では、いくらおカネが余っていても、それを有効に活用するという動機が働きにくいわけです。これがインフレ環境になって、いま投資をしないと損をするという発想が民間部門に根づいてくると、おのずと設備投資につながるというのが理屈だと考えます。

 そう考えると、第1の矢から全体を考えた時に、デフレからの脱却を議論の発射台にしているのは非常に正しいことですし、それがうまく設備投資の拡大に、例えば投資を増やしやすくするような税制改革を併せてすることで、いよいよ国の底力というか潜在成長率が上がってくることになるだろうと思います。

ブース 日本企業が内部留保し、設備投資に回していないということですが、日本企業の原動力、あるいはやる気を復活させるのは、どういう対策を取ればいいのでしょうか。

宮内 民間企業にも問題があるんだろうと思います。企業は、特にリーマン・ショック以降、安全に経営したいということでキャッシュをため込んでいますが、インフレがベースになると、それが会社にマイナスになりますから運用しないといけない。

 普通の企業であれば、新しい投資をしてリターンを求めることになると思います。経営者はリスクを踏み越えて前に行こうと頑張らなければなりません。それは民間企業の経営の責任です。

株式市場の乱高下は一時的なもの、債券市場は・・・

ブース 株式市場が劇的に乱高下しています。アベノミクスは資産バブルではないかという批評もありますが、株式市場の雰囲気が実体経済のほうにも移っていくんでしょうか。

 また、なぜこのような株式市場の動きになっているんでしょうか。そして、日銀はどんなスタンスを取っているのでしょうか。