今回のコラムでは、最も身近なお茶といえる「煎茶」の歴史と科学に光を当てている。前篇では、煎茶がどのように日本人の生活の中で「いつもそこにある」存在になっていったのか、その歴史をたどった。江戸時代の初期の頃からの長い歴史の中で、急須などが使われるようになり、現在にも通じる製茶法が編み出され、そして新品種が生まれて、煎茶は日本人の嗜好品となったのだ。
緑茶どころの日本では、カテキン類に対するさまざまな機能性に科学の目が向けられてきた。「緑茶をたくさん飲む人は病気になりにくい」という研究結果も、カテキン類が関連しているのではないかと考えられている。
では、緑茶の成分は具体的に、どのように体に良い影響をもたらすのだろうか。そんな疑問を解くべく、後篇では、長らくお茶のカテキン類の機能性などを研究している三井農林に話を聞いた。
同社は緑茶や紅茶などのお茶のメーカーとして知られるが、静岡県藤枝市にある食品総合研究所では、1980年代から茶カテキンの効能を研究し、成果を実用化に結びつけている。2013年には「お茶科学研究所」という社内プロジェクトも発足し、お茶の健康作用やおいしさに関する研究に力を入れている。
取材中、同研究所所長の南条文雄氏から「茶カテキンの働きは確かにあるが、本当は何が効果をもっているのか、研究しているところ」という話が飛び出した。実は、カテキン類以外の物質もまた、健康を高める機能をもちうることが解明されつつあるのだという。その物質とはどんなものだろうか。