例えば土木工事では、契約形態にもよるが、固定的な総額を合意して工事や作業を請け負うランプサム契約の場合、えてして作業量をできるだけ抑えようという受注者側の意識が働くため、見積もりが甘く、施工が“安かろう悪かろう”になる可能性が高い。
また、設計と建設を1つの契約に集約するデザインビルド方式の場合は、設計責任を受注者が負うため、施工時のトラブルの責任も含め、多くのリスクを受注者である建設企業が負わざるを得ない。
施工段階におけるこのようなリスクの高さは、日本の建設企業が海外、特に開発途上国における建設事業を敬遠する大きな理由となっている。
だからこそ日本は、このような受注者のリスクを軽減するため、設計を発注者側で行う発注方式(施工のみの請負方式)を採用するとともに、精度の高い入札図書を作成することによって“安かろう悪かろう”をできるだけ排除し、参加企業、特に日本企業にとってのハードルを下げるため、さまざまな工夫を凝らしながら丁寧に詳細設計を進めていく。
施主であるミャンマー国鉄と地元企業を引き合わせて企業側のコミットメントを高めようとするのも、実際に鉄道橋を歩き回って健全度を診断するのも、まさにそうした取り組みの一環だと言えよう。
特に前出のNo.13橋梁は、全面的に架け替えるか、改修だけですむかによって本プロジェクトの総事業費が大きく変わってくるため、今回の健全度調査が持つ意味は非常に大きい。
この国の成長を“離陸”させる牽引役として期待される鉄道の再生に向け、1ステージ進んだ日本の協力の最前線を追う。
(つづく)
本記事は『国際開発ジャーナル』(国際開発ジャーナル社発行)のコンテンツを転載したものです。