風に吹かれても動じることなく作業を続ける技術者と、それを見守るミャンマー国鉄の職員たち
収穫した野菜をかついで鉄道橋梁を渡る地元の人
 

 と思えば、どこに潜っていたのか、前方で別のヘルメット姿の男性が線路の下からひょっこり顔を出す。彼らは、普段は日本国内でJR東日本が所管する鉄道橋梁の補修に携わっている技術者たちだ。

 将来、鉄道が改良されて列車の速度が現在の時速30kmから最大で時速120kmまで上がった時に、この橋梁は全面的な架け替えが必要か、部分的な補修で良いかを判断する健全度診断を行うためにやって来た。

 とはいえ、植民地時代に建設されたこの橋梁には、設計図面はもちろん、どれぐらいの耐久荷重で設計されているかという基礎情報すら残されていない。そのため、4人はまずこうして橋梁の腐食・損傷状態を目視で把握し、自分たちであらかじめ用意した調査用紙に記録しているのだ。

 ひととおり目視検査が終わると、上部工にひずみ計を設置し、たわみ計も併用して、列車が走行するたびに橋梁にどれぐらい内部応力が発生したわむのか測定する。また下部工には約30kgの重りを橋脚にぶつけて振動数を測定し、建全度を推定する。

 技術者の1人が、「この橋梁には銃痕を後から補修している箇所が散見される。一般的に溶接部分は強度が低下するため、今回はその影響がどの程度あるかについても調べる必要がある」と話してくれた。

地元企業の士気を高める

 一方、2014年9月、首都ネピドーでは中央駅に隣接したミャンマー国鉄の会議室である会議が始まろうとしていた。

 副総括で土木のチームリーダーを務めるオリエンタルコンサルタンツグローバルの藤吉昭彦さんら調査団メンバーのほか、ミャンマー国鉄のウー・ソー・バレンタイン副総裁など約10人、さらに2社の企業関係者ら20人あまりが顔を並べている。

健全度調査に先立ちミャンマー側に作業手順を説明する
ヤンゴン駅にほど近い鉄道橋梁のデポの様子