この2社は今回、ヤンゴンからマンダレーに至る約600kmの鉄道のうち、タウングーまでの約250km区間の地質と強度を調べるために全321地点でボーリング調査を請け負った地元企業だ。
これほど広範囲にわたる地質調査は、ミャンマーにとって初めてだ。冒頭、藤吉さんは、「今回の調査で得られる地質データは、ミャンマー鉄道の将来にとって非常に貴重なものになるだろう」とあいさつした。
しかし、この会議をセットした同氏にはもう1つ狙いがあった。地元企業の鼓舞と牽制である。
今回の調査はどちらの企業にとっても経験したことがない規模のものである上、雨期が明ける前のこの時期は水たまりやぬかるみが点在しており、難条件ぞろいの作業となる。
だからこそ藤吉さんには、工程管理をおろそかにされたり、実際には作業していないのに虚偽のデータを報告されることを何としてでも避けたいとの思いがあった。
「両社をミャンマー国鉄に引き合わせ、調査の意義を直々に説いてもらうことで彼らの士気とモチベーションを高め、誠実な仕事をするよう働き掛けることがこの会議の一番の目的だった」(藤吉さん)。
施工時のリスクを下げる
ミャンマー支援の目玉として日本政府が進めるヤンゴン~マンダレー間鉄道整備事業。その詳細設計調査(D/D)が始まった。
ミャンマー全土を対象に2012年12月末から約1年半にわたり実施されてきた運輸交通分野のマスタープラン調査と、その中で実施されたフィージビリティースタディー(F/S)を受けて進められている。
この調査の目的は、実際の改修工事に向けて具体的な設計図面を引くことである。
応札企業はこの図面を基に施工方法や手順を考え、工費を見積もり入札するが、この図面がいい加減に作成された場合、安価な見積もりを出して落札した企業が実際の施工段階に入ってから「地形条件が想定と違う」と追加コストを要求してきてトラブルに発展したり、不適切な施工が行われることになりかねない。