「2040年までに896の自治体が消滅する」という衝撃の数字が話題となり注目を集めた『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(増田寛也編、中公新書)。

 それに対して真っ向から反論した『地方消滅の罠 増田レポートと人口減少社会の正体』(山下祐介著、ちくま新書)は、人口減少社会における地方の危機を表し、多種多様な地方の在り方の必要性と可能性を示した。

 2015年上半期、消滅自治体と名指しされた地域では、この2冊を軸に書店を起点とした「地方創生」議論が、地域社会全体に波紋を広げた。

限界集落に生きる者の覚悟

 地方創生は、まず地方を知ることから始まる。極端な例かもしれないが、限界集落を題材とした1冊からご紹介したい。

 65歳以上の高齢者が人口比率で住民の50%を超えた集落は、やがて消滅する地域であるとして「限界集落」と呼ばれている。日本には、約8000もの限界集落があると言われている。しかし、それは行政単位として地域を維持することが限界なのであって、そこに人が住み、人としての営みを維持することができないわけではない。

 若者は仕事を求めて都市部へ流出、少子化が進み、学校が統廃合し、地域医療が崩壊し、防災にも普段の交通にも深刻な影を落とす。職も無く、基幹産業の農林業の担い手もなく、荒れた里が虚しく広がっている。そこには、「限界」という言葉以上の「痛み」がある。そこに住むことを選んだ住人たちは、我々には想像することができないほどの「痛み」を通り越した「覚悟」がある。少なくとも、過疎地と呼ばれる地に生まれ育った私には、そう感じられる。