コーカサスの山々

 「グルジア」の日本語国名表記が「ジョージア」に変わった。「在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律改正案」が成立、「ロシア語的表記」から「英語的表記」となったのである。

 以前からの「グルジア」政府の要請に応えたもので、すでに多くの国が「ジョージア」と呼んでいる。

 しかし、「どうせなら、自称の「サカルトヴェロ」じゃない?」とも思えるし、「ジョージア」に直結するのは、やっぱり、大都市アトランタを擁する米国州名。

 グルジアワインやグルジア語も「ジョージアワイン」「ジョージア語」と呼ぶべきなのだろうか、とも考えてしまう。日本国内での影響はさしてないとの報道があるのは「知られざる国」だからだろうか。

 そんな「ジョージア」の風景は、現在劇場公開中の『あの日の声を探して』(2014)で見ることができる。

長く戦禍にあえいできた地域

 とはいえ、映画の舞台は1999年のチェチェン。コーカサス山脈(これは英語読み。近年はロシア語読み「カフカス」が主流)を挟み、その北東に接する、長く戦禍にある地の物語のロケ地なのである。

 第2次世界大戦終戦直後のドイツを舞台とした『山河遥かなり』(1948)をリメイクしたこの作品は、両親をロシア兵に惨殺され、無言となった9歳の少年とEU職員との心の触れ合い、そして弟を探す姉との再会をめぐる物語。

 アカデミー作品賞・監督賞受賞作『アーティスト』(2011)で無声映画の表現力を示したミシェル・アザナヴィシウス監督がこの新作で描く世界は、チェチェン語、ロシア語、フランス語、英語、と、現地語、共通語、そして、それぞれの母語、母国語が飛び交う。

 もう1人の主人公、ロシア軍に強制入隊させられチェチェンの戦地に送られてきた普通の若者が、新兵いじめに遭いながら、やがて、殺人マシンと化していく姿にもゾッとさせられる。