今月11日付けニュー・ストレーツ・タイムズ等のマレーシア地元紙が伝えたところによれば、KUBマレーシア社はマレーシア・スティール・ワークス社との提携により計画していたジョホールバル市内の高速輸送システム(RTS: Rapid Transit System)建設プロジェクトに漸く本腰を入れる。

 KUBマレーシア社は、当面、マレーシア運輸省と協議を行った上で同プロジェクトの再提案を行うとのことだ。

 シンガポールと海峡を挟み面しているマレーシアのジョホールバル市一帯には巨大都市を建設しようという「イスカンダル開発計画」(2006年11月政府発表)がある。

 マレーシア政府とジョホール州政府が主導する同計画では、国家予算に織り込まれている2025年までの累計投資額は約1180億米ドル(約14兆円)とされ、その巨大さが伺える。

「イスカンダル開発計画」のカギを握る高速輸送システム

シンガポールとジョホールバルを結ぶ国境橋コーズウェイリンクの渋滞(写真提供:筆者)

 最近、このイスカンダル開発計画ブームの波に乗り、日本でも海外の住宅・不動産投資の候補として注目を集めており、インターネットで「ジョホールバル」と検索すると、不動産投資を勧誘するサイトが多数出てくる。

 高い経済成長が続き不動産価格が高騰しているシンガポールからリタイア後の移住者が増えてジョホールバルがその受け皿になるということで、特にイスカンダル地域のB地区(ヌサジャヤ地区)で一戸建てやマンション(現地ではコンドミニアムと称する)中心に主にシンガポール人を当て込んだ住宅開発が急速に進んでいる。

 このイスカンダル開発計画の目玉として国内外の投資家が注目してきたものに、シンガポールとジョホールバル間のRTS(当初、2018年開通予定)があり、多くの人々が当地の公共交通網が便利になることに期待を寄せている。

紆余曲折のRTS建設計画

 マレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道網の建設については、過去、計画は何度も浮上するものの、都度、コスト等の問題で立ち消えとなってきた。

 最近の経緯を振り返ると、始動しているようではあるが、やはり途中、運輸省など当局の許可が下りない等、マレーシア側の何らかの原因により本格的に動き出すには至っていない。