「オーナーの大胆な決断」で急成長を続けてきた韓国の現代自動車グループ。だが、2015年1月に、オーナー親子による有力グループ企業株の売却を巡る勇み足があった。巨額の株式売却劇がわずか1日で撤回になった顛末とは。

 韓国ではとにかくニュースが多く、進展のスピードも速い。「1週間海外にいてニュースを見ないと、何が起きているのか分からなくなる」と言われるが、わずか1日で何がなんだか分からない事態が起きた。それも、現代自動車グループに関連する話だ。

中途半端に思える持ち株売却計画の意図

 2015年1月13日、韓国の有力紙の1面にそろって大きな記事が載った。

 「鄭夢九会長親子、現代グロービス株式大量売却」

現代自動車会長、差し戻し審で執行猶予も より厳しい社会奉仕命令

現代自動車グループの鄭夢九(チョン・モング)会長〔AFPBB News

 現代自動車グループの鄭夢九(チョン・モング=1938年生)会長と、長男の鄭義宣(チョン・ウィソン=1970年生)副会長が、有力グループ企業である現代グロービスの株式合わせて13%分を市場外で売却するという内容だった。

 現代グロービスはグループの物流企業で、2014年の売上高は14兆ウォン(1円=9ウォン)近くに達する見通しの上場大企業だ。営業利益も6000億ウォンを超えると見られる優良企業だ。

 鄭夢九会長は11.5%、鄭義宣副会長は31.88%の株式を保有する現代グロービスの大株主だ。合わせた持ち株比率は43%強に達する。

 13日の各紙報道によると、このうち鄭夢九会長が6.71%分、鄭義宣副会長が23.18%分を売却し、2人合わせた持ち株比率を29.99%に下げるという。

 12日の現代グロービス株の終値は30万ウォンで、2人は、これより7.5~12%安い26万4000~27万7500ウォンで株式を売却する方針だと報じた。売却額は合わせて1兆3000億ウォン以上に達する大型売却になるはずだった。

 なんだかずいぶんと中途半端な売却だな――。そう感じる読者の方も多いはずだ。それもそのはずだ。今回の売却計画は、そもそも、この中途半端な数字に意味があったからだ。