11月中旬に北京でアジア太平洋経済協力(APEC)会議が開催される。安倍晋三首相は、会議に参加して中国の習近平国家主席と首脳会談を行う意欲があると言われている。だが中国は開催国として安倍首相をどのように受け入れればいいか困っている様子である。

 靖国神社に参拝し、尖閣諸島(中国名「釣魚島」)の領有権に関する争議を認めず、集団的自衛権を憲法解釈の変更で認めようとする安倍首相を安々と迎え入れ、首脳会談を行えば、中国国内で習近平国家主席に対する批判が高まるのは目に見えている。

 かといって中国には「朋(とも)あり遠方より来る」という故事もある。わざわざ訪れてくる要人を歓迎しなければ、国際社会における中国のイメージが悪くなるに違いない。

 おそらく中国の本音としては、安倍首相が自らAPEC会議への出席を辞退し、高村正彦副総裁などが代理出席することを願っているだろう。しかし、中国の思う通りにはいかない。安倍首相はあくまでも出席する姿勢を崩していない。中国は「大国」としての度量と外交手腕が試される。

日中関係は大局を見るべし

 丹羽宇一郎元駐中国大使によれば、目下の日中関係は国交回復して以来、最悪な状況にあるという。丹羽大使と同じ考えを持つ日本人は少なくない。はたして日中関係は本当に最悪な状況なのだろうか。しかし仔細に日中関係を観察すれば、それは正しくないことが分かる。

 目下、両国の政治指導者の仲は確かに悪い。だが国民レベルで見ると、日中関係は決して悪くない。2013年に来日した中国人観光客は前年度より減少はしたものの100万人の大台をキープしている。日本では、中国人の反日感情が高まっているとよく言われるが、中国人が本当に日本のことを嫌っているのなら、なぜわざわざ高額の旅費を払って日本に来るのだろうか。そして、なぜ日本国内を観光して回り、日本製品を買いあさるのだろうか。中国共産党が実施している愛国教育は、日本の評論家がテレビでコメントしているほど機能していない。