「裕福な人がより裕福になるのは、裕福な人の方が政治システムに質のいいコネを持っていて、自分たちの利益促進のためにそのコネを利用することができるからだ」──。

 政治学者のフランシス・フクヤマ氏は、25年前、「ナショナル・インタレスト」という外交専門紙に「歴史の終わり?」と題する論文を書いて一躍「時の人」となった人物である。そのフクヤマ氏が、「ウォールストリート・ジャーナル」(2014年6月11日付)に寄稿した文章「民主主義は今も『歴史の終わり』」の中で、ワシントン政治の機能不全に対して深い憂慮を示している。

 フクヤマ氏が問題視しているのは、自己中心的な利権集団の力が増していることである。

 民主主義制度において市民が自らの利益を守るのは正当なことである。そのため米国では多くのロビー団体が組織されてきた。だが、これらの活動も過ぎれば特権になってしまう。結果の平等よりも機会の平等を強調する米国では格差そのものはそれほど大きな問題となってこなかったが、リーマン・ショック後の金融業への多額の政府支援を目の当たりにした国民の間で「米国がエリート集団と強力な利権集団によって牛耳られてしまった」との不満が急速に高まっているというのだ。

ロビー活動の大きな影響力

 ロビイストは、政治家や官僚に対して献金を申し出ることにより、特定の企業や団体に有利な政策を実行させるのが仕事である。

 米国ではロビイストとして活動するためには政府に登録することが必要だが、現在3万人以上のロビイストが存在し、トップクラスのロビイストは年間7000万ドルもの報酬を受け取っていると言われている。オバマ大統領は「既存の政治を象徴するロビイストの影響力を弱める」ことを2008年の大統領選挙で公約に掲げていた。しかし、ロビイストの影響力は現在に至るまでいささかも揺らいでいない。

 1998年に14億4000万ドルだったロビイング費用は、2008年に初めて30億ドル台に達した。オバマ政権になっても30億ドル台を維持している。